人工透析装置用除菌洗浄剤のパイオニアである医療用除菌洗浄剤メーカー・アムテック株式会社様(以下、アムテック社)。新設された神戸工場の生産ラインにはクボタ計装の液体充填機「KKC-20SKVG」が導入されており、医療器具用除菌洗浄剤の生産性向上と安定供給を実現しています。
本記事では、アムテック社が「KKC-20SKVG」を導入した背景やクボタ計装からのご提案と導入製品の特徴、導入後に得られた効果について詳しくご紹介します。
アムテック社が液体充填機とそのラインに求めていたもの
アムテック社は日本・中国・タイに製造拠点を持ち、各国の医療機関への安定供給を支える体制を整えています。もともと国内の委託先企業でクボタ計装の液体充填機が安定稼働していたことをご評価いただき、自社のタイ工場にも導入してくださっていました。
アムテック社の神戸工場が立ち上がったのは2023年。タイ工場に引き続きクボタの液体充填機の導入をご検討いただいていましたが、新設工場への導入ということもあり、以下のようなご要望をお持ちでした。

1.医療用製品に耐えうる充填精度
アムテック社が取り扱っているのは医療用除菌洗浄剤。例えば人工透析装置用の除菌洗浄剤は透析装置で水と希釈して使用されるため、充填された液体の容量が異なると使用時の希釈濃度が変わり、除菌や洗浄効果に影響を及ぼしかねません。充填量に誤差が生じると薬液の濃度が変わって品質に影響を与えるため、極めて高い充填精度が求められていました。
2.さまざまな薬液への耐性
アムテック社では強酸性や強アルカリ性の薬液を取り扱っており、種類に応じて適切な材質やノズルの選定が求められていました。
例えば強酸性の液剤に合わない金属製のノズルを使用すると短期間でノズルが腐食し、薬液に不純物が混入してしまう可能性があります。充填機自体の故障につながり、修理や交換にコストと時間がかかる可能性も。また、強アルカリ性の液剤に適していない素材を使用するとノズルや機械の内部が劣化して精度が低下し、充填量にばらつきが生じることがあります。
こうしたリスクを防ぐためには、薬液の性質に合った材質とノズルの選定が非常に重要なのです。
3.生産ラインにおける提案力
限られたスペースでの生産ラインを効率的に運用するためには、生産の安定性を確保し、トラブルを最小限に抑えることが必要。それを実現するには、信頼性が高く長時間の稼働にも耐えうる機器に加えて、効率的な導線と作業員の安全性を確保した生産ラインの構築が求められます。
単に機器を納品するだけでなく、限られたスペースにその機器をどう配置し、他の機器とどう組み合わせれば生産性を最大化させられるか。アムテック社は、パートナーからの積極的な提案を求めておられました。
顧客ニーズに応えたクボタの製品と提案とは?
充填精度・薬品耐性・信頼性といったアムテック社からのご要望に対し、クボタ計装はどのようなご提案をしたのか?選んだ機器の特色や提案内容を詳しくご紹介します。
アムテック社が実際に導入した液体充填機(KKC-20SKVG)

設置環境 | 非防爆地区 |
充填容器 | 18L缶 / 20Lペール缶など |
秤量 | 30kg |
最小表示 | 0.01kg |
精度 | ±1/600~1/1000 ※ |
能力 | 90~120缶/h ※ |
フレーム材質 | SUS304 |
充填ノズル材質 | SUS304 / パッキン PTFE |
使用空気圧 | 0.4MPa 20L/min(ANR) |
電源 | AC100V±10% 50/60Hz 30VA |
1.高精度でムラのない充填性能

KKC-20SKVGは、高精度な充填を実現するため2段階の充填方式を採用しています。
まず最初に大供給で多量の液体を充填し、後に小供給で微調整を行って正確な充填を実現。この2段階方式により、過充填の防止と不足充填時の補充が可能となっています。
KKC-20SKVGにはパルス供給(自動)・注ぎ足し供給(自動)・再起動(半自動)・手動供給の4つの充填方法があり、作業環境や製品の特性に合わせて最適な方法を選べます。
また、充填リズムが安定しないと容器の入れ替えやキャップ締めの作業が遅れ、全体の生産効率が低下してしまいます。この問題を解決するため、クボタの充填機は充填リズムを一定に保つ機能を備えています。
2.強酸性・強アルカリ性でも安心な耐薬品性


アムテック社が取り扱う除菌洗浄剤には強酸性や強アルカリ性の液体も含まれており、これらの液体に対応できる機器が必要でした。
クボタの液体充填機は耐薬品性が高く難燃性や耐久性に優れたポリ塩化ビニル(PVC/塩ビ)製のノズルを採用しており、強酸性や強アルカリ性の液体を安全に充填できます。また、特定の液種は金属を避ける必要があるため、テフロン製のノズルもご提供。この選択肢の豊富さが、多様な液体に対応できる柔軟な運用を実現しています。
3.生産性を最大限に高めるライン設計を提案




アムテック社は、限られたスペースであっても効率的で安全な生産ラインを確立したいと希望されていましたが、これに対してクボタ計装は充填機だけではなく、段ボール組立機・封函機・バンド掛け機といった周辺設備を含むトータルなライン設計をご提案しました。
まずは製品を梱包する段ボール箱の組立を自動化するため、シート状の段ボールケースを自動で組み立てて底面にテープを貼る機器の導入をご提案。次に、充填された製品を入れた段ボール箱の蓋を自動で閉じてテープ貼りを行える封函と、複雑なバンドの掛け方にも対応できるバンド掛け機の導入についてもご提案しました。
いずれの機器も、スペースを有効に使えるコンパクトな設計が特長。レイアウト調整についてもアムテック社と共に検討を重ね、限られたスペースで最大限の生産性と安全性を確保できる配置や導線を追求しました。
付帯機器の導入や効率的なライン設計によって、神戸工場では1階の製造ライン3ラインに液体充填機6台を設置し、1日平均約500箱の生産量を実現しています。
【+α】メンテナンス性・耐久性にも優れ、安全も確保

KKC-20SKVGの新型バルブは、工具を使わず簡単に組み付け・分解が可能なうえに洗浄もできる「ヘルールクランプ」という配管継手を採用。日々のメンテナンスが簡便になるため、最小限の労力で清潔な環境を保ちながら運用することができます。
さらに、ほこりの侵入を防いであらゆる方向からの水の飛沫にも耐えられる「IP65」相当の防水性能があり、水しぶきがかかる環境でも安心して使用可能。ステンレス製の本体は水洗いすることができるため、医療用洗浄剤という高い衛生管理が必要なアムテック社のような現場に適しています。
加えて、デジタルロードセル(D-LC)を使用することで機器自体の耐食性も強化。Gタイプには液ダレを防止する昇降タレ受けが搭載されており、作業の安全性と清潔さを維持します。

操作が簡単な点も、KKC-20SKVGの大きな特徴。空の容器をセットし、起動ボタンを押すだけで充填を開始できます。
受け皿とノズルの上昇・下降速度を1つのつまみで調整できるため操作が簡単で、作業者が装置に直接触れることがないため事故やケガのリスクを低減。さらに、過充填の際にはアラームが鳴ったのち簡単に設定変更が可能となっています。
加えて、液体の飛び散りを防ぐために液はね防止用のシャワーノズルを採用しており、小さな容器への充填でも作業者の安全と清潔な作業環境を確保しています。
こうした操作性の高さによって設定や調整にかかる時間が短縮でき、タイムロスを最小限に抑えられるようになっています。
データ管理機能も充実しており、直近50件の充填結果を自動的に記録可能。これまで手書きで記録していた現場なら、品質管理や生産性の把握がグッと楽になります。
USBメモリを使ってデータの保存や転送が可能なので、外部のシステムや他の機器との連携もスムーズに行えます。
クボタ計装の提案力と充填機が、より高品質な生産を可能に

アムテック社は、クボタ計装の液体充填機「KKC-20SKVG」の導入とご提案によって高精度な充填・多種多様な薬品への耐性・効率的な生産ラインの構築といった課題を解決し、生産効率の向上と安定供給を実現しています。
クボタ計装では、アムテック社のような工場新設に伴う機器の導入はもちろん、「既存工場の効率化や生産性向上が課題」「生産ライン全体について相談したい」「ニーズに応じてカスタマイズして欲しい」といったご相談も承っています。まずは相談だけでも歓迎ですので、液体充填機とその生産ラインについてのことなら何でもお気軽にお問い合わせください。
「液体充填機のバリエーションが見たい」という場合も、以下よりご要望に応じた資料を無料でご提供しています。充填物や作業スペースに合わせた豊富な液体充填機やノズル、その周辺機器についてもじっくり比較検討していただけますので、遠慮なくご要望をお申し付けください。